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新NISA3年目の落とし穴―「全力投資」「枠の使い切り」が目的化する罠とは? 今だからこそ、見つめ直したい“分散”の意義

制度開始から3年目を迎えた新NISA。投資初心者の参加という裾野を広げた一方で、「枠を使うこと」自体が目的化しているケースも見受けられる。制度はあくまでも「器」であり、大切なのはその「中身」である資産形成。その本来の意味を見失ってはいないだろうか。そんな今だからこそ必要な対策とは何か、ファンドアナリストの篠田尚子さんに聞きました。

記事提供:Finasee(フィナシー)

新NISA「使い方の脱・画一化」で

自分流の設計へ

新NISAは制度開始から丸2年を経て、「投資を始める制度」としては一定の役割を果たしたと評価できます。これまで投資と距離のあった層が市場に参加し、長期・分散という考え方が広く浸透した点は、大きな成果といえるでしょう。

一方で、2年目を終えて見えてきた課題もあります。それは、制度の「分かりやすさ」と「始めやすさ」が、そのまま「使い方の画一化」につながっている点です。

「オールカントリー」や米国株中心の運用は、あくまでポートフォリオの土台であり、それ自体が完成形であるかのように受け止められている現状は、分散投資の本来の意味を狭めている可能性があります。また、SNSを中心に、「毎年満額を埋める」「とにかく早く枠を使い切る」といったメッセージが強調される中で、本来個々の家計やライフステージに応じて設計すべき投資計画が、制度主導で一律化されつつあるようにも感じます。結果として、「枠を使うこと」が目的化し、将来どのように使う資産なのか、どこで取り崩すのかという視点が後回しになっているケースも少なくありません。

3年目に向けて期待したいのは、新NISAを「積み上げる制度」から「設計する制度」へと捉え直す動きです。NISAはあくまで非課税という「器」に過ぎず、重要なのはその器の中身と、他の制度との組み合わせです。2027年に予定されているiDeCoの制度改正も見据え、NISA単体ではなく、世帯全体の資産形成・税制優遇をどう組み立てるかという視点が、3年目以降はより求められていくでしょう。

資産形成は「家計全体」で考える

iDeCo(個人型確定拠出年金、イデコ)の大幅な制度改正が2027年1月に予定されていることから、今年のうちに世帯全体で「資産運用に回す額」の見直しを実施しておいた方が良いと思います。

前述した通り、SNS界隈(とネット証券)はNISA枠を毎年満額使うことを奨励していますが、満額使えば5年で枠は埋まってしまい、どこかのタイミングで売却の判断も迫られます。他方、360万円のうち 幾分かをiDeCoに回せば、毎年着実に所得控除の恩恵も受けられます。

つみたて投資枠、成長投資枠ともにある程度「余力を残した状態」で投資額(積立額)を設定することをおすすめします。

また、別の視点では、2025年が既にそうであったように、米国を発端とした国際情勢の不安定さが増す中、相場の潮目が少し変わりつつあることから、米国株にプラスする形で分散投資を意識した方が良いでしょう。

今、立ち返りたい分散投資―
機関投資家の視点に着目

例えば、下記のような投資対象資産が挙げられます。

・金(ゴールド)
・新興国株式
・日本株

いずれも、「オールカントリー」では十分に取り入れられない資産(金はそもそも入っていない)。分散投資は、いざという時のために備えておくというだけでなく、相場の浮き沈みがある中で「取りこぼさない」ために実践するという意味もあります。機関投資家など、プロの投資家はどんなに近年の米国株式市場が好調でも、米国株だけに投資するということはしません。下値抵抗力が期待できる金、長期的な成長に期待する新興国株式、バリュエーションの観点でまだ投資妙味がある日本株を、現在の米国株中心のポートフォリオに「ちょい足し」することで自動的に分散投資が実現できます。

執筆者

篠田 尚子(しのだ しょうこ)

楽天証券客員研究員 ファンドアナリスト

慶應義塾大学卒業後、国内銀行を経て2006年ロイター・ジャパン入社。傘下の投資信託評価機関リッパーにて、投信業界の分析レポート執筆、評価分析などの業務に従事。2013年、楽天証券経済研究所入所。日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。近著に『【2024年新制度対応版】NISA&iDeCo完全ガイド』『FP&投資信託のプロが教える新NISA完全ガイド』(ともにSBクリエイティブ)。