会社員のみなさんは職場の資産形成支援制度をどれくらい使いこなせているでしょうか。もし「使ったことがない」「どんな制度があるか知らない」という方がいれば、それはかなりもったいないことかもしれません。本連載では、職場の制度(職域)を活用して「お金に不安なく健全に向き合える状態」(ファイナンシャル・ウェルビーイング)を実現するための知識をご紹介します。今回のテーマは60歳からのライフプラン」です(全4回の4回目)。
※これから定年を迎える世代には「配偶者が専業主婦(夫)の世帯」が多いことから、本稿では「配偶者が専業主婦(夫)の世帯」のケースをモデル世帯としています。
記事提供:Finasee(フィナシー)


第1回では生涯安定収入プラン、第2回では生涯安定収入をかなえる3カ条の詳細、第3回では定年後のライフプランを自分用にカスタムする際のポイントについてご紹介しました。
【参考】
第1回:【50代必読】知っておきたい定年後のお金の話―“生涯安定収入”をかなえるための極意3カ条とは?
第2回:「公的年金繰下げ・企業年金一括受取」が正解ではない!? 夫婦で"安心老後"を目指すためのお金の新常識
第3回:定年後も“生涯安定収入”を目指す! 自分専用のライフプランを作るための「4つの重要ポイント」

では、生涯安定収入を目指すライフプランを実行したケースとそうしなかったケースではどれだけの差が生まれるのでしょうか? 想定される架空の事例をもとに比較していきます。
某サービス企業のマーケティング部長Aさん。本年9月で60歳となり、長く勤めた会社で定年退職を迎えることとなりました。Aさんは学生時代の同級生Bさんと25歳で結婚しており、その後Bさんは専業主婦(夫)として子育てに専念してきました。現在、子どもはすでに成人して独立しています。
生涯安定収入を考えずライフプランを作成した場合
Aさんはこれまで仕事優先で働いてきたため、60歳以降は仕事をせず夫婦2人で楽しく暮らしたいと考えていました。その結果、Aさんが設計した定年後のライフプランは次の図の通りです。

残された配偶者はどうする⁉ 想定される最悪な結末は……
前項でご覧いただいた通り、前項のAさんのライフプランは、第1回の記事でご紹介した「生涯の安定収入をかなえる極意3カ条」を全く反映していません。この場合、どのようなネガティブな結末が考えられるでしょうか。

「●●ショック」で運用資産が大暴落
3000万円で始めた資産運用では、年率5%を目指し、国内外の株式や投資信託を中心に運用を開始しました。当初は世界的な好景気もあり5%を超える運用成果となっていたものの……5年経過した頃になんと「●●ショック」が起こってしまいます。
その結果、資産が大幅に目減り。65歳から70歳目前までは生活資金をカバーするために保有資産からも一部取り崩す必要が出てきました。
Aさん急逝によりBさんの収入が激減
しかし、Aさんは「70歳になれば公的年金も開始されるので、支出を切り詰めればその後の生活は安定するはず」と考えていました。その矢先、不幸なことにAさんは病気により急逝してしまいます。
1人残されてしまった配偶者のBさん。てっきりAさんの繰下げにより増額した公的年金額に応じた遺族年金をもらえると考えていましたが、そうでないことを知りがくぜんとします。「●●ショック」で資産が目減りした分、生活費の不足分を補うために保有資産も取り崩しており、残額が少なくなっています。これからどのように生活していけば良いのか老後破産の不安が頭によぎりました。
では、Aさんが安定収入を目指すライフプランを検討していたらどうなったのでしょうか。Aさんの状況に当てはめると、次のようなライフプランを設計できます。

Aさんが70歳で亡くなったとすると、Bさんが受け取る公的年金は月14万円です。これだけ見ると収入が減ったように見えますが、公的年金に加えて退職一時金・財形・持株会などの残額580万円、企業年金の残額1500万円、運用していた保有資産1100万円の合計3180万円程度がBさんに残されます。これらを20年間で取り崩すとすると月13万円になり、国の年金とあわせて月27万円の収入が確保できます。
こうして、BさんはAさん亡きあとも安定した生活を送ることが可能となります。
ご紹介したネガティブケースは極端な例ですが、場合によっては作成したライフプランが残された配偶者の経済状況に大きく影響を与えることをイメージしていただけたのではないでしょうか。モデルプランをもとに、ぜひご自身の状況にあったリスクへ備えたライフプランを検討していきましょう。
ファイナンシャル・ウェルビーイング・マネジメント編集部
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