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新NISAで「教育資金」を作る方法は? 学資保険との違いも解説!

投資初心者・経験者を問わず注目を集めている「新NISA」。制度について、現役銀行員・証券アナリストで個人投資家でもある浅見陽輔氏が、極限まで分かりやすい表現で解説します。今回のテーマは「教育資金」です。
 
2024年から、新NISAがスタートします。一方、子どもの教育資金形成のための「ジュニアNISA」という制度は2023年末で終了しました。
 
では、子どもの教育資金は作りにくくなったのか? と言われると、実はそうでもありません。確かにジュニアNISAはなくなりますが、親名義で新NISAをうまく使うことで、しっかりと教育資金を備えられるのです。


教育資金づくりは「大学入学」を1つ
のゴールに

ところで、教育で最もお金がかかるタイミングはいつでしょうか。
 
その答えは……多くの方がイメージする通り、大学入学から卒業までの4年間です。まず、小学校から高校までの期間で考えると、すべて公立であればそれほど大きくお金はかかりません。
 
文部科学省が公表する『令和3年度 子供の学習費調査』(令和4年12月21日)を見ると、公立学校に通う場合の1年間の学習費は小学校が35万2566円、中学校が53万円8799円、高校が51万2971円(教育費、給食費、学校外活動費の合計)。
 
年間だと大きな金額に見えるかもしれませんが、月額で見るとそれぞれ2.9万円、4.4万円、4.2万円ほど。「これなら、なんとか払えそう」と支出のイメージも湧きやすいですね。
 
一方で、大学に進学した途端に教育費は跳ね上がります。
 
こちらも文部科学省の『令和3年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について』を見てみると、私立大学入学の初年度は文系で年間約118万円、理系で年間約156万円もかかることが分かります(入学料、授業料、施設設備費の合計)。
 
大学2年目以降は入学料(全平均で約24万円)の負担がなくなりますが、それでも大きな出費であることには変わりがありません。
 
「今の家計から考えると、かなり大きな支出だな……」そう思った方のために、新NISAを使った「教育資金づくり」をオススメします。

学資保険 VS 新NISA、どちらを選ぶ
べき?

ところで教育資金と聞くと、真っ先にイメージがつくのは学資保険ではないでしょうか。ここからは、「学資保険」と「新NISAでつみたて投資をした場合」でシミュレーション(※)してみます。
 
<学資保険の場合>
まずは、学資保険。いろいろな種類がありますが、大手生命保険会社が提供する一般的な商品を例に見ていきます。
 
まず保険料の支払いは、「0歳から10年間、毎年決まった額を積み立てする」タイプ、そして保険金の受け取りは「18歳で100万円、19歳~22歳で毎年50万円受け取る(合計で300万円)」ものと仮定します。
 
この場合、毎年の保険料支払いは27万8740円。10年間で278万7400円を支払い、最終的に300万円が返ってくるので、返戻率は107.6%。この低金利の時代にもかかわらず、教育資金を備えながら確実に7.6%もプラスになるのはありがたい話です。
 
<新NISAの場合>
一方で、同じ金額を新NISAで運用した場合はどうなるか。
 
ここでは、「0歳から10年間、毎年27万8740円を利回り4%で積み立て投資する」という前提で考えてみましょう。結論から言うと、順調に利回り4%で運用できたとすると、18歳時点では……なんと、476万円もの金額となります。さらに新NISAを使えば、元本から増えた約197万円に対して税金がかからないのです。
 
***
 
もちろん、学資保険は返戻額が決まっており、確実性の高さが最大のメリットです。一方で新NISAでの教育資金づくりは、あくまでも「投資」。もちろん、相場の変動によっては目標額を達成できないどころか、元本割れするリスクもあります。
 
投資の期待利回りより低いけれど、安全性を最重視して学資保険を選ぶか。リターンを最重視して、新NISAを使った投資を選ぶか。未来が読めない以上、「絶対の正解」はありませんが、これらのメリット・デメリットを正しく理解し、あなたの考え方に合った選択をすることが重要です。
 
※シミュレーションについて
試算した数値は過去のデータを参考にした予想であり、資産増加率や成果を保証するものではありません。また、ここでは投資にかかる手数料を考慮していません。

お金の教育には「株主優待」が役立つ

では、新NISAで教育資金を作る場合、何を買えばいいのか。
 
万人にオススメできる投資先は、やはりインデックスファンドです。米国の株価指標「S&P500」に連動する投資信託などを選べば、分散効果を得つつ収益が狙える……とリスクを抑えた投資が可能です。
 
一方、私が個人的にオススメしたい投資方法は、教育資金を作りつつ「お金の教育」につなげること。結論から⾔うと、「株主優待狙いの株式」を買うことです。インデックスファンドの積み立て投資を行いながら、一部の資金を株主優待狙いの株式に回すのも良いでしょう。
 
なぜこの方法をオススメするかと言えば、優待株を買うと、毎年決まった時期にカタログギフトや商品券などが届くからです。それを何年も続けるうちに、⼦どもは「毎年家にいろいろなものが届くけど、なんでだろう?」と気づくはず。そうして⾃分で疑問を持ち、親であるあなたに質問を投げかけてきた時……ここで初めて、投資について説明してあげるのです。
 
私は銀⾏に勤めていることもあり、⼦どもには「お⾦の教育をしっかりしてあげたい」という想いがあります。ただ、難しいのはその教え⽅。⼦どもにとって、親から⼀⽅的に詰め込まれる知識は苦痛でしかないと思うのです。
 
しかし、⼩さい頃から株主優待に触れ、⾃分で興味を持つことができればどうでしょうか。親が強制しなくても、⾃分から知識を欲しがるようになるのではないでしょうか。
 
⼦どもに収益額などの数字を見せても、「投資でお⾦が増えている」というイメージをつかむのは難しい。⼀⽅、優待品というわかりやすいリターンがあれば、⼦どもはどう感じるか。「投資をすると、素晴らしい⾒返りがある」という感覚を、⼩さい頃から⾝につけられるはずです。
 
親として、お⾦や投資の教育は⾮常に難しい問題です。⼦どもが幼すぎると、複雑な内容を理解できない。逆に⾼校⽣ぐらいの気難しい時期になれば、そもそも「⾯と向かって何かを伝えられる」という機会が減っているかもしれません。
 
したがって、親は優待株を使い、⾃然と投資に触れて学ぶ環境づくりに徹する。そんなやり⽅も、「お⾦の教育」の1つの選択肢となるのでないかと考えています。

入学祝いに「口座と投資資金」という
選択肢も

最後は、教育資金づくりというテーマから少し離れますが……「大学入学祝いに、子どもにNISA口座と投資資金をプレゼントする」というご提案です。
 
2022年4月より、民法上の成年年齢が20歳から18歳まで引き下げられました。これにより18歳から選挙権が与えられ、親の同意なく契約行為も可能となります。さらに、新NISA口座も18歳から作ることができるのです。
 
高校を卒業したばかりで、これから世の中を知っていく18歳というタイミング。「これから新生活とともに、大人の世界へと一歩踏み出す」ことを自覚してもらうために、ぜひお子さんのために、新NISA口座開設の手続きを手伝ってあげてほしいのです。
 
具体的には、大学入学と同時に、お子さん名義で新NISA口座を開設する。そして新NISAで投資するための元金を、入学祝いとしてプレゼントしてあげてはいかがでしょう。例えば新NISA口座開設とともに100万円を渡し、「このお金は自由に投資して良いけれど、大学卒業まで現金として引き出すのはダメ」というルールを設けても良いかもしれません。
 
もちろん18歳では投資の知識・経験がなく、失敗することもあるでしょう。でも、それでいいのです。人生で取り返しのつかない大失敗をする前に、若いうちに「小さな失敗」をたくさんさせておく。むしろ「投資でお金が減って悔しい」という経験は、今後の人生で損失額以上の“財産”になるはずです。
 
さらに、最初から新NISA口座にお金を入れておけば、そもそも信用取引などのハイリスク投資はできません。また、投資で元本を失うことはあっても、「大失敗して借金を負ってしまった」ということにはなりません。
 
***
 
ちなみに私にも、現在4歳と2歳の子どもがいます。大学入学は、まだまだ先の話ですが……これから自分が新NISAでお金を増やし、その一部を「投資の元金」として子どもにプレゼントできる未来を楽しみにしています。

執筆者

浅見 陽輔(あさみ ようすけ)
銀行員・証券アナリスト

大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科を卒業後、2013年に銀行に就職。10年のキャリアで、投資運用、リスク管理、法人・個人向け融資、システム部門を経験。証券アナリスト、FP2級、簿記2級、税務上級など20種類の金融系資格を保有。趣味は優待株投資と筋トレ。本業の傍ら、Kindle(電子書籍)作家としても活動中。代表作に『図解 新NISA』『トクする株主優待の選び方』『最後のジュニアNISA』『絶対に続く筋トレ』などがある。Twitterアカウントは【@you_def】。