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新NISAで商品購入後は「放置」でもいいの? 最低限確認することは…

投資初心者・経験者を問わず注目を集めている「新NISA」。制度について、現役銀行員・証券アナリストで個人投資家でもある浅見陽輔氏が、極限まで分かりやすい表現で解説します。今回のテーマは「商品購入後の振り返り」です。
 
新NISAでは、何十年投資しても利益に対して税金がかかりません。したがって、新NISAを使った投資では長期間での運用が前提となります。では、一度商品を購入したら、その後の「振り返り」はどうすれば良いのか。本記事では、そのような視点をお伝えしていきます。


そもそもの「振り返る手間」を減らす
方法

まず、最も楽な方法は「振り返りしなくていい投資信託」を買うことです。
 
代表的な商品で言えば、バランス型の投資信託。例えば株式・債券・不動産などに均等に投資するタイプの商品であれば、持つだけでリスクが分散されます。
 
一般的に、好景気では株式や不動産は上がり、債券が下がる。逆に、不景気の場合は株式や不動産が下がり、債券は上がる……という動きとなります。したがって、バランス型の商品は「どんな局面でも資産価値が下がりにくい」というメリットがあるのです。このような商品は基本的に振り返りが不要で、買ってそのまま持ち続けても大きな問題はありません。
 
一方、バランス型の商品には2点のデメリットがあります。
 
1つは、好景気で資産を増やすチャンスを逃してしまうことです。バランス型投資信託の主な目的は、資産を増やすことではなく「守る」こと。良くも悪くもマイペースな商品なので、「どんな株式を買っても価格が上がっていく」という好景気下でも資産価値が上がりにくく、歯がゆい思いをするかもしれません。
 
そしてもう1つのデメリットは、「資産価値が下がりにくい」といっても、例外があることです。例えばロシア・ウクライナ問題が勃発した際は、バランス型商品も大きく価格を下げました。世界的に株や不動産の価値が暴落したことに加え、ロシアの債券も値下がりしたことで、分散効果が効かなかったものと思われます。
 
投資信託を買ったら、なるべく振り返りはしたくない。そして、投資はとにかく安定が第一!という方は、検討の余地ありの商品です。一方、債券と言っても絶対に安全とは言えない点や、リターンが低い点は理解しておく必要があります。
 
では、株式投資信託などバランス型以外の商品を購入する場合はどうすればいいのか。私自身、現在つみたて投資でS&P500をメインで購入していますが、正直、商品の価格推移を見るなどの振り返りはほとんどしていません。1つの正解は、過去の成績を振り返るよりむしろ「今後の世界経済」に注目することだと考えています。
 
世界経済のどのような点に注目しているかなどは、「振り返り」と趣旨が異なるため本記事では割愛しますが、このテーマはいずれ改めて解説したいと思います。

株式購入後に必ず確認したいコト

株式に投資する場合、事前に「長期投資できるか」を確認することが必要です。具体的に見るのは、大きく3つ。①売上や利益が、過去から大きく下がっていないか。②純資産がプラスで、かつ直近で大きく減っていないか。③お金の流れは正常か。
 
これらのポイントは、買う前に確認しますが……実は、株式を買った後にも重要なチェックポイントとなります。買ったタイミングでは良い企業でも、今後もずっと良い企業であり続けるとは限りません。
 
企業の見通しが悪くなれば、株価が大きく下がったり、最悪倒産したりする可能性もあります。このような場合、多少の損が出ても早めに売っておいた方がいいでしょう。言い換えると、「買う時に見たポイント」が変わっていないかを定期的に確認する。これだけで、安心して株式を持ち続けられます。
 
一方で、企業分析は本気でやり出すとキリがありません。理想を言えば年4回発行される「四半期報告」をチェックし、その度に今後の見通し(利益を出し続けられそうか等)を判断するのがベストです。
 
しかし専業のトレーダーでもない限り、そこまでの分析は難しいでしょう。したがって、投資した後の企業分析は2〜3年に1回でOKです。この再分析の時に疑問に思うポイントがあれば、その要因を調べてみるのです。
 
例えば直近の利益が減っていても、たまたまその年に集中して事業に投資している……といった一時的な要因があるかもしれません。売上高や利益が減っていても、一時的な要因であれば、また回復する可能性があります。
 
そのような判断なら、売らずに持ち続けるという選択となります。しかし2〜3年ぶりに分析をしてみると、売上高も利益も減っている。特に理由が見当たらなかったり、理由があっても回復しそうになかったり……といった場合は早めに売り、別の株を買うことも考えましょう。

資産の割合を見直す「リバランス」の
方法

投資の振り返りをすることで、資産の割合を一定に保つこともできます。
 
例えば投資前に「株式と債券を、1対1の割合で持つ」と決めた場合。株式型投資信託を毎月3万円、債券型投資信託を毎月3万円ずつつみたて投資すれば、想定通り資産割合を1対1にキープできるのでしょうか。実は、そうではありません。
 
このような投資を1年間続けると、株式型投資信託・債券型投資信託をそれぞれ36万円ずつ買うことになりますが……1年後、株式だけ「50万円」に上がっていればどうでしょうか。同額でつみたて投資していたにもかかわらず、株式型投資信託は58%(50万円)、債券型投資信託は42%(36万円)と、資産割合にズレが生じてしまいます。
 
この場合、取れる選択肢はいくつかあります。
 
1つは買い増しです。価格が上がらなかった債券型投資信託を14万円買い増すことで、比率を1対1に戻すことができます。
 
逆に、上がりすぎた株式型投資信託を14万円分売ることで、資産割合を1対1にキープすることも可能です。
 
加えて、その中間の方法として、株式型投資信託の値上がり分14万円のうち、半分の7万円を売る。そして、7万円分の債券型投資信託を買うのです。この方法では、全体の資産額を増減させず、資産割合を調整できます。
 
このような資産割合の見直しは「リバランス」とも呼ばれます。このリバランスは、高頻度でしすぎると管理が大変。したがって、例えば「1年に1回だけ見直しをする」「想定していた割合から10%以上ズレが生じた場合にリバランスする」とルールを決めてしまえば、取り組みやすくなるでしょう。

投資について考えすぎないことも大切

投資では、価格を見極めて売買するのがベストです。しかしそれは「理想」であり、ベストなタイミングの判断は非常に困難。安い時に買い、高い時に売るためには相当の知識と経験、センスや運も必要です。だからこそ、「投資について考えすぎず、ベストなタイミングは目指さない」というのも1つの答えです。
 
投資に限らず、モノを売り買いする上で傾向として言えることは、たったの2つです。
 
①売買のベストなタイミングはわからない
(日々の変動を読める人はほんの一握り)
②長い目で見ると、緩やかに値段は上がっていく(世界経済は緩やかにインフレになる)
 
投資のタイミングも、この2つを理解した上で戦略を立てる必要があります。
 
今日買った株式は、明日上がることもあれば、下がることもあります。デイトレードで生計を立てている人ですら、予想が100%当たることはありません。ましてやサラリーマンなど別の本業を持つ人にとっては、そもそも相場を見続けることが不可能です。つまり、ほとんどの人にとって、短期間の値動きはコントロールできないのです。
 
では、どうすればいいか。コントロールできない部分は、きっぱりと諦めましょう。相場は気にせず、あなたの「買う準備」が整った時点で買う。そして、お金が必要になったタイミングで売る。
 
つまり相場のタイミングよりも、自分が売買できるタイミングを重視するのです。家を買う時に土地が今高いか安いかは気にせず、「子どもが生まれたタイミングで買う」と決めてしまうのと同じようなイメージです。
 
昔から「欲しいと思った時が買い時」とはよく言いますが、まさにその通り。仮に買った後に株が下がっても、「ルール通りに買ったんだからいいや」と、自分を納得させることができます。「長期投資して問題ない商品か」だけを見極め、売買タイミングは自分の懐事情で判断する。この考え方を持つことで、迷わず投資することができます。

執筆者

浅見 陽輔(あさみ ようすけ)
銀行員・証券アナリスト

大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科を卒業後、2013年に銀行に就職。10年のキャリアで、投資運用、リスク管理、法人・個人向け融資、システム部門を経験。証券アナリスト、FP2級、簿記2級、税務上級など20種類の金融系資格を保有。趣味は優待株投資と筋トレ。本業の傍ら、Kindle(電子書籍)作家としても活動中。代表作に『図解 新NISA』『トクする株主優待の選び方』『最後のジュニアNISA』『絶対に続く筋トレ』などがある。Twitterアカウントは【@you_def】。