共働き家庭が増えたこともあり、夫婦の家計管理方法が多様化してきました。専業主婦が主流だった時代は、家計全体を1つにまとめて管理する、いわゆる「財布は1つ」が一般的でした。現在は、自分の収入を自分で管理したいと考える人もおり、「夫婦別財布」にする家庭もあります。
夫婦のお財布事情は、夫婦のお金の考え方で決まります。お金の管理しやすい方法が夫婦で異なる家庭は、お互いに納得する方法を探すことが大切になるでしょう。この記事では、夫婦の財布事情を3種類に分け、その特徴を整理していきます。
夫婦のお財布事情とは?
「お財布事情」という言葉は曖昧な表現ですので、この記事での意味を決めておきたいと思います。この記事では、夫婦の収入と支出の把握のしかたや、家計のやりくり方法をお財布事情と呼ぶことにします。また、夫婦の収入や出費をまとめて家計管理することを「同じ財布」、自分の収入や支出は自分で管理することを「別財布」と呼びます。
夫婦のお財布事情は大きく分けると次の3つです。それぞれの特徴を次の章以降で解説していきます。
- 夫婦別財布にする
- 財布を1つにする
- 生活費だけ同じ財布にする
夫婦別財布にする
夫婦別財布は、夫婦がそれぞれ自分自身の収入や支出を管理する方法です。夫婦2人に収入がある家庭で選択できる方法です。生活費の支払には、負担する生活費の分担を決めるのが一般的です。生活費の項目で担当を決める場合は、住宅費・教育費は夫、食費・日用品・公共料金は妻のように支払う項目を決めます。収入の残りはそれぞれ自由に使えます。
この方法は、自分の自由になるお金があるのがメリットです。それぞれが負担する家計分を支払えば、残りのお金の使い方は配偶者に相談する必要がないからです。
ただし、配偶者の収入や資産がどのくらいあるのか分からないのが注意点です。実際は収入差が大きいのに、家計の負担額は同じくらいのケースや、相手が貯蓄しているだろうと考え、お互いに貯蓄をしていないというケースが考えられます。夫婦2人とも貯蓄がないと、急な出費に対応ができなくなってしまいます。
財布を1つにする
この方法は、夫婦の収入や支出をまとめて、家計のやりくりをする方法です。夫婦2人で管理を行う家庭と、どちらか1人が管理を行う家庭があります。収入をまとめるので、共働き世帯も専業主婦(夫)世帯も選択できる方法です。
この方法は、お金の出入りや貯蓄額を把握できるため、家計全体の資産を管理しやすいのがメリットです。
ただし、個人が使うお金は、別財布に比べて自由度が低い傾向にあります。家族全体で使うお金や貯蓄を個人で使うお金より優先させるケースや、個人で使うお金を配偶者に相談する必要があるからです。なお、個人がお金を使う場合、必要な時に必要な額を渡す、お小遣い制にするなどが一般的です。
生活費だけ同じ財布にする
この方法は、生活費部分だけ夫婦で管理し、残りはそれぞれで管理する方法です。ちょうど別財布と財布1つの特徴を合わせたような方法です。夫婦2人とも収入のある家庭向きの方法です。
この方法は、負担額を家計の傾向に合わせて夫婦で決めることができます。例えば、別財布のように費用ごとに決めたり、毎月30万円の出費のうち、夫20万円、妻10万円のように家計全体から負担額を決めたりすることもできます。
この方法は、家計の出費や同じ財布の残額を夫婦2人で認しやすいのがメリットです。夫婦で家計の現状を把握できるため、家計のやりくりを2人で相談することができます。ただし、配偶者の収入や貯蓄額がわからないため、家計全体の資産額が分からないのが注意点です。
貯蓄するコツ
どのお財布事情でも、貯蓄をするという共通認識を夫婦で持つことが大切です。その上で、夫婦でお金のやりくり方法を考えたり、貯蓄計画を立てたりして、貯蓄目標を達成する行動へと移っていきます。
お金のやりくりや貯蓄方法は、お財布事情の特徴に合わせたコツがあります。ここでは、それぞれのお財布事情に合わせた貯蓄のコツを見ていきましょう。
夫婦別財布のケース
別財布で貯蓄を行う場合は、生活費のお金の流れを把握することが大事です。例えば、お互いが負担している生活費について話し合う機会をもうけるなどして、相手が負担している費用についても把握しておきましょう。正確な金額でなくてもよいので、自分の家計の出費を把握できると、どのように貯蓄していくか考えられるようになります。なお、話し合う時期はボーナス時期・年末年始・年度末など、夫婦にとって覚えやすいタイミングでかまいません。
貯蓄をするときは、1人ずつ目標貯蓄額を決めてお金を貯める方法や、2人で管理できる口座などで一緒に貯めていく方法などがあります。比較的、お互いがチェックできる方が、貯蓄するという共通認識が強くなるため、貯蓄しやすい傾向にあります。
財布を1つにするケース
財布1つの場合は、家計や貯蓄について夫婦で把握できる状態ですので、生活費と貯蓄のバランスを決め、計画的に貯蓄できる仕組みを作ります。具体的な方法は、次のようなものが考えられます。
- 収入を1つにまとめ、生活費や貯蓄額を決めていく
世帯のお金の出入りからバランスを見て貯蓄にまわす分を決めていきましょう。毎月少しずつ貯蓄する・ボーナスを貯蓄するなど、家庭に合った方法を決めていきます。 - 片方の収入で生活し、もう1人の収入は貯蓄
夫婦の収入が大きく違う場合など、片方の収入で生活できる場合に選択できる方法です。片方の収入が貯蓄に回るので、確実に貯蓄が増えていきます。
生活費だけ同じ財布にするケース
生活費だけ同じ財布の場合は、生活費は夫婦2人でやりくりしていますので、家計の状況を把握できています。この場合は、別財布のお金もありますので、次のような方法がとれます。
- 別財布のお金で各自が貯蓄する
各自が貯蓄目標に向かってお金を貯めていきます。相手の貯蓄が分からないため、目標通り貯蓄できているかどうか、目標に無理がないかなどを確認することが大切です。 - 同じ財布のお金から2人で貯蓄する
財布1つと同じように、生活費と貯蓄額のバランスを決めます。もし、生活費の支払で精一杯の場合は、貯蓄額も含めて同じ財布に入れる金額を決める、出費を洗い出してムダがないか確認するなどの対策を行います。
夫婦に合った家計のやりくり方法を探そう
夫婦のお財布事情は、夫婦が納得できる方法にすることが大切です。家計全体を把握してやりくりする方法や、基本的に自分の収入は自分で管理する方法、これらを組み合わせた方法があります。
もし、貯蓄を増やしていきたい場合は、貯蓄をするという目標を2人が持つことが大切です。夫婦でお金のやりくり方法が違う場合は、お互いが納得する方法を見つけることが大事です。記事の内容も参考にしながら、自分たちの方法を見つけてはいかがでしょうか。
執筆者
黒川 一美(MILIZE提携FPサテライト株式会社所属FP)
大学院修了後、IT業界でセールスエンジニア・営業企画として働き、出産を機に退職。
家計を守る立場になり、お金との向き合い方を見つけるためFP資格を取得。
現在は独立系FP法人であるFPサテライト株式会社所属FPとして活動中。
3人の子育て中の母でもある。