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老後資金4000万円不足問題って何?

今までに、老後資金が2,000万円不足するといった話をテレビやネットニュースなどで見聞きしたことがある方は多いと思います。しかし、最近になって「老後資金4,000万円不足問題」とニュースで取り上げられるようになり、「この前まで2,000万円不足という話だったのに、どうして?」と疑問を持たれた方もいるでしょう。今回は、そもそも老後資金が不足するという話から、4,000万円不足問題について解説をしていきます。

老後はいくらかかる?

人生100年時代といわれていますが、みなさんは、老後どのような生活を送りたいですか?生活する上で一番気になる点は、やはり経済面ではないでしょうか?はじめに、老後のお金の収支について見ていきましょう。

家計費はいくらかかる?

2023年総務省の家計調査報告によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯で、1世帯あたり1か月間の支出は250,959円です。同調査2022年では、1か月間の支出は236,696円であり、この1年で14,263円支出が増加していることがわかります。
また同様に、65歳以上の単身無職世帯で、2023年1世帯あたり1か月間の支出は145,430円、2022年143,139円であり、2,291円支出が増加していることがわかります。

参考:総務省統計局「2023年家計調査報告(家計収支編)」
2022年家計調査報告(家計収支編)

公的年金はいくらもらえる?

同じく2023年総務省の家計調査報告によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯で、1世帯あたり1か月間の実収入は244,580円(そのうち社会保障給付が218,441円)、可処分所得は213,042円です。
また、65歳以上の単身無職世帯で、1世帯あたり1か月間の実収入は126,905円(そのうち社会保障給付が118,230円)、可処分所得は114,663円です。
可処分所得とは、所得から税金・社会保険料などを差し引いた金額で、個人が自由に使用できるお金です。つまり、年金であっても、額面通りの金額はもらえないということを知っておかなければいけません。

収支はどうなる?

それでは、上記2023年の数字を元に、収入(公的年金可処分所得)と支出(家計費)をあわせてみましょう。

収入(円) 支出(円) 収支(円)
65歳以上の夫婦のみ世帯 213,042 250,959 -37,917
65歳以上の単身世帯 114,663 145,430 -30,767

単純に計算すると、1か月間の収支はどちらも赤字で、年金だけでは老後資金が不足することになります。

老後資金4,000万円不足問題って何?

では、老後に向けて、どのくらいの資金を準備しておくと良いのかが、重要なポイントになります。ここでは、実際にシミュレーションしながら、試算していきましょう。

2,000万円不足問題

2019年6月に、金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書において、老後20~30年間で資金が1,300万~2,000万円不足するといった試算を出し、大きな話題となりました。
この数字はどのような根拠で算出されたのでしょうか?金融審議会に厚生労働省が提出した資料(2017年総務省家計調査引用)によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)では、1か月間の収入180,958円、支出235,477円で、毎月54,519円の赤字です。

毎月の収支赤字額(円) 1年あたりの

月数(月)

年数(年) 収支赤字額合計(円)
20年間の場合 54,519 12 20 13,084,560
30年間の場合 54,519 12 30 19,626,840

つまり、20年間の場合は約1,300万円、30年間の場合は約2,000万円不足する計算になります。
一般的に公的年金の受給がスタートする65歳から95歳までの30年間とした場合、「保有する金融試算から2,000万円の取崩しが必要になる」と金融庁が示し、老後の生活においては公的年金だけでは賄えず資金不足になる可能性があることを示唆しました。

参考:金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」総務省統計局「2017年家計調査報告(家計収支編)」

4,000万円不足するって本当?

あれから5年が経過し、最近のニュースで「老後資金4,000万円不足問題」と取り上げられ、驚いた方も多いでしょう。なぜこのような金額が出てきたのかというと、最近の物価高が影響しています。
総務省の消費者物価指数全国平均によると、2023年は前年比3.2%の物価上昇がありました。もし仮に、今後年3.5%の物価上昇が続いたらどうなるかをシミュレーションしてみましょう。
年3.5%の1年複利で計算すると、10年後は1.035の10乗で約1.41倍、20年後は1.035の20乗で約1.99倍となります。
老後資金不足金額2,000万円に3.5%の物価上昇を加味すると、10年後には2,820万円、20年後には3,980万円不足する計算になります。つまり、これが老後資金4,000万円不足問題といわれる理由です。

参考:総務省統計局「消費者物価指数全国2023年平均」

安心して老後を過ごすためにできること

これらのシミュレーションは、あくまでモデルケースで試算した場合であり、人によって不足額は異なりますので、一概に2,000万円、4,000万円不足するという話ではありません。
とはいえ、老後に不安を感じている方も多いと思いますので、今からできることとして、老後の資金計画を立てていくといいでしょう。下記でその方法についてご紹介していきます。

家計費収支を把握して老後に必要な金額を試算しよう

家計簿をつけるなどをして、ご自身の家計を項目毎にしっかり把握することから始めてみましょう。項目毎に見直しや節約をすることで、家計費を抑えることができるかもしれません。
また、公的年金の見込額を把握しておくことも大切です。
収入と支出のバランスが取れれば、理想的といえるでしょう。
家計費収支を把握できたら、ご自身の老後に必要な金額を試算してみましょう。

資産運用について考えよう

長期的に資産運用して、老後の資産形成をしていくといいでしょう。
資産運用には、預貯金やiDeCo(確定拠出年金)、NISA(少額投資非課税制度)などがあります。

預貯金は、低金利が続き、長く預けても資産を大きく増やすことは難しいですが、リスクが少ないのが特徴です。
次に、iDeCo(確定拠出年金)は、公的年金とは別に、積み立てた掛け金を60歳以降に年金として受け取る、私的年金制度です。掛け金が所得控除になり、かつ運用益に税金がかからないなどの税制優遇があります。
最後に、NISA(少額投資非課税制度)は、通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合は利益や配当に対して約20%の税金がかかりますが、NISA口座で投資した金融商品から得られる利益は非課税になる制度です。
資産運用の方法として代表的な例をあげてみましたが、今まで資産運用の経験がない方でも、ご自身で調べる、専門家に相談するなどして、少しでも資産形成に取り組むといいでしょう。

ライフスタイルを考えよう

長寿化により、定年退職後の人生が長くなっているため、老後資金がより必要になる可能性が高いといえます。だからこそ、いつまで働くかをご自身で考えてみましょう。

高年齢者雇用安定法の改正もあり、65歳まで定年を引上げる企業も増えているようですし、今後更に延びる可能性もありますので、高齢者が働ける環境や機会が増えるかもしれません。

家計費の収支が赤字の場合や、保有する金融資産では年金の不足分を賄えない場合は、老後もできるだけ長く仕事を続けることも、選択肢の1つとして考えてみるといいでしょう。

まとめ

老後資金がどのくらい必要かは、収入・支出の状況やライフスタイルなどによって大きく異なります。ですので、2,000万円、4,000万円といった数字に囚われず、まずは、ご自身の老後に必要な資金を試算してみるといいでしょう。

大切なのは、老後は収入と支出のバランスをできるだけ取れるようにするということです。
さらに、資産運用や、いつまで働くかを考えながら、老後の計画を立てていくといいでしょう。

執筆者

崎浜 由佳(MILIZE提携FPサテライト株式会社所属FP)

東京都出身。
大学卒業後、大手広告会社に24年勤務し、メディアプラニングやマーケティングなど多岐にわたる業務に従事。
その後、教育業界に転職し、幼児教室の講師や教育シッターなどを経験。
両親の介護を機にFP資格を取得し、相続や教育関連の金融知識が豊富。
FPサテライト所属のFPとして、お客様に寄り添い提案することをモットーに活動している。