年末から年明けの時期になると、自営業やフリーランスなどの中には確定申告が気になっている人も多いのではないでしょうか。正社員の人も、医療費控除などのために確定申告を行う人がいるかもしれません。
確定申告の申告方法や申告項目は、毎年のように見直されていることはご存知でしょうか?税制改正に合わせて申告項目が変更されるケースや、2004年に導入された国税電子申告・納税システム(以降、e-Tax)の機能性向上によって作業が効率化するケースがあります。
この記事では、近年の確定申告のやり方をもとに手間を減らすポイントを紹介します。また、記事の後半では2023年の税制改正による2024年の確定申告書の変更点も解説します。
このページの目次
ポイント1:e-Tax利用で自動計算を活用
現在、確定申告は指定用紙に手書きで行う方法と、e-Taxを利用する方法の2つの方法があります。
手書きで行う場合は、収入や費用・控除額などをもとに自分で納税額や還付額を計算します。控除額も自分で計算するため、控除適用には項目ごとに計算方法を調べなくてはなりません。
e-Taxは手書きの申告に比べて、計算の手間を減らせる場合があります。e-Taxでは入力した金額をもとに、納税額や還付額が自動的に計算されます。項目によっては、控除額が自動的に計算されるものもあります。
また、次の2つは集計用フォームが用意されており、フォームに必要事項を入力すると申告額が自動的に計算されます。
・医療費控除の控除額
・源泉徴収口座以外の配当などの納税額
なお、過去にe-Taxで申告した場合は、過去のデータを活用することもできます。過去のデータを利用すると、申告者の情報や扶養している家族の情報など変化がない項目の入力手間を省けます。
ポイント2:e-Taxでオンライン申告
e-Taxでは、申告書の提出方法をオンライン送信と印刷した書類送付の2つから選択できます。オンライン送信はデータの送付で申告を行いますので、印刷物の送付や持ち込みが不要になります。ただし、申告内容によっては添付書類の提出が求められる場合もあり、紙で提出する添付書類を求められる場合は送付や持ち込みを行うことになります。
そのため、オンライン送信は紙で提出する添付書類が無ければ、書類送付に比べて郵送費や郵送の手間を削減できます。また、書類持ち込みは窓口が空いている時間に税務署に行かなくてはなりませんが、オンライン送信は、24時間好きな時間に申告できるといったメリットもあります。
ポイント3:e-Taxとマイナポータルとの
連携拡大で自動入力
e-Taxはマイナポータルと連携させることで自動入力される項目があり、2024年の申告では新たに4種類の項目が連携されることになりました。2024年の申告に利用できる連携項目をまとめた表がこちらで、太文字の4種が新たに連携できるようになった項目です。
表1 e-Taxのマイナポータル連携による自動入力項目
収入 | 控除 | |
マイナポータル連携による自動入力対象 | 給与所得の源泉徴収
公的年金などの源泉徴収 株式の特定口座 |
国民年金基金掛金・iDeCo
小規模企業共済掛金 医療費・ふるさと納税 生命保険・地震保険 国民年金保険料 住宅ローン控除 |
国税庁 「令和5年分の確定申告はマイナンバーカードとe-Taxでさらに便利に!」をもとに執筆者作成
ポイント4:所得税納付は
キャッシュレスにも対応
所得税は、現金納付とキャッシュレス納付に対応しており、複数の選択肢から選べます。現金払いは金融機関や税務署の窓口で支払う方法と、コード決済を利用してコンビニエンスストアで支払う方法があります。金融機関や税務署は窓口が空いている時間しか納付できませんが、コンビニエンスストアであれば営業時間内の好きな時間で納付できます。
キャッシュレス納付では口座振り込み、クレジットカード、スマートフォンアプリなどで納付できます。これらはインターネットで手続きができますので、自宅から好きな時間に納税手続きをすることができます。
ポイント5:書類作成が不安な場合は
会計ソフトを利用する方法も
自分で確定申告書作成をするのが不安な人は会計ソフトを利用するのも一案です。会計ソフトの中には確定申告の書類作成ができるものや、書類作成サポート機能があるものがあります。会計ソフトで確定申告の書類を簡単に作成できれば、確定申告の手間がかなり削減できるのではないでしょうか。
また、会計ソフトには銀行口座やクレジットカードの履歴から自動的に帳簿へ仕分ける機能や、請求書や見積書作成ができるソフトもあります。費用面と機能面のバランスによりますが、売上や費用の帳簿記入や仕訳を自動化しておけば記入漏れを回避できるかもしれません。
2024年確定申告書記入欄の変更点
2023年の税制改正により、2024年の確定申告書の記入欄に変更点が3ヶ所あります。順に見ていきましょう。
海外に住んでいる親族の区分記入
海外居住の親族がいる場合、「海外居住親族」の該当する区分の番号を記入します。該当区分の番号は次の表の条件によって決まり、1~4の場合は扶養控除が適用されます。
表2 海外居住親族の区分
区分の条件 | 区分番号 | |
16歳未満 | 5 | |
16歳以上30歳未満または、70歳以上 | 1 | |
30歳以上70歳未満 | 1.海外に留学中 | 2 |
2.障害者 | 3 | |
3.生活費や教育費として1年間38万円以上補助 | 4 | |
上記1~3以外 | 5 |
国税庁「令和5年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」(20ページ)をもとに執筆者作成
重複する区分に該当する場合は、条件によって記入する番号が決まりますので、詳しくは「令和5年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」をご覧ください。
住民税の特定株式収入の「申告不要制度」削除
特定株式収入の課税方式は、2023年まで所得税と住民税で分けることができましたが、2024年の申告から課税方式を統一することになりました。
2023年の申告は、所得税は申告課税、住民税は源泉徴収のように異なる課税方式を採用する場合、確定申告書で指定する必要がありました。しかし、課税方式が統一されたことにより、この項目が不要になりました。
取引先のインボス登録番号記載欄
インボス制度導入により、確定申告書に取引先のインボス登録番号記載欄が新設されました。記入は任意ですが、インボス登録番号を記入した場合、取引先の住所などの記入が免除されます。
なお、「2割特例」が適用されるインボス発行事業者は、e-Taxで確定申告すると入力した売上金額から消費税の納付額が自動計算されます。
便利なツールを活用して確定申告の負荷削減を
自営業やフリーランスなどの個人事業主の場合、確定申告を毎年行っている人もいらっしゃるでしょう。事業内容によっては、時間も手間もかけて準備をしている人がいるかもしれません。
近年e-Taxの機能性向上や会計ソフトなどの確定申告対応など、手間を削減する方法も増えています。事業内容やツールの使いやすさと、費用面との兼ね合いも検討しつつ、自分に合ったツールを活用して確定申告の作業負荷の軽減を目指してはいかがでしょうか?
執筆者
黒川 一美(MILIZE提携FPサテライト株式会社所属FP)
大学院修了後、IT業界でセールスエンジニア・営業企画として働き、出産を機に退職。
家計を守る立場になり、お金との向き合い方を見つけるためFP資格を取得。
現在は独立系FP法人であるFPサテライト株式会社所属FPとして活動中。
3人の子育て中の母でもある。