2022年4月1日に成人年齢が20歳から18歳に引き下げられてから、2年が経過しようとしています。国民生活センターの調査によると2022年度に寄せられた契約当事者が18歳または19歳の相談件数は9,907件で、最も相談が多かったのが「脱毛エステ」でその他、架空請求や副業、賃貸アパート退去時の原状回復トラブルなどがあります。
トラブルに多く見られるセールストークとしては「放置しただけで報酬」「今日契約したらこの価格」「稼いだ分で後から支払えばいいよ」などがありますが、このようなトラブルに合わない、お金に強い子供を育てるにはどうしたら良いのでしょうか?
お金に強いとは?
近年、金融リテラシーという言葉をよく耳にするようになりましたが、金融リテラシーとは経済的に自立し、家計の管理や生活設計、経済活動における契約など生活に必要なお金に関する知識や判断能力を指します。
つまり、「稼ぐ」「使う」「貯める・増やす」「借りる」などの生活に必要な経済活動を行う際、先述したトラブルに合わないためのお金に関する知識や判断能力があることを一般的に”お金に強い”と言います。
今回は、お金に強い子供を育てるために「稼ぐ」「使う」「貯める・増やす」「借りる」の4つの観点から説明をします。
稼ぐ(お手伝いの習慣)
子供がお金を稼ぐ方法として一番に思い浮かぶのは、家のお手伝いではないでしょうか。
世の中では、「お金欲しさにお手伝いをするのはどうだろう」という意見もあるかもしれません。
確かに、お金を稼ぐ手段としてのお手伝いというのであれば、少し違うかもしれません。
しかし、お手伝いをすることが「自分の行為が誰かの役に立ち、その対価としてお金を受け取る」のであれば、家のお手伝いのみならず、大人になったときの働く理由としても良いのではないでしょうか。
そのような考えを理解していれば、「楽に稼ぐことができる」などはめったにないことがすぐに分かるはずです。
子供にお手伝いをしてもらったら、感謝の気持を伝え、その対価としてお金を渡すことを習慣化してみてはいかがでしょうか。
使う(おこづかい帳をつける)
2020年から小学校でも家庭科の授業の中でお金の教育が始まり、自立した消費者の育成に関する内容の充実として「買い物の仕組みや消費者の役割」に関する内容が新設されました。
家庭科の授業や日々の生活の中でお金を使うことに関してはなんとなく分かっていると思いますが、実際におこづかい帳をつけることで、お金の流れを把握することができます。
ポイントとしては以下の3つがあります。
1.ルールを決める
「子供同士でお金の貸し借りをしない」「毎月月末に収支を計算する」などお金を使うときや、おこづかい帳の運用ルールを子供と決めます。
2.子供を否定しない
子供が、持っているお金を後先考えず全て使ってしまったときや、不要なものを買ってしまったときに「なんでそんな物を買ったの!?」と言いたくなるかもしれませんが、「子供がなぜそれを買うと決めたのか?」、「本当に必要な物なのか?」、「それを買ったことで収支がどうなったのか?」などを子供と一緒に考えてみましょう。
3.計画を立てる
欲しい物が高額だったり、誰かへのプレゼントや、お金を使う時期が決まっているのであれば、毎月いくら貯金をすれば目標を達成できるのか、一緒に計画を立ててみましょう。
親が電子マネーやクレジットカードで買い物をしたり、ATMでお金を下ろすところを子供が見たとき、子供にはお金は無限であるかのように見えるかもしれませんが、お金は有限であり、使えば減り、使い過ぎるとなくなります。
お金の価値が見えにくい現代だからこそ、おこづかい帳で収支を明確にし、親子でお金について話し合うきっかけを作れると良いですね。
貯める・増やす(子供とお金のゲームをする習慣)
子供の年齢によっては投資の話は難しいと思うかもしれません。
しかし、投資は生活の中に身近に存在していると考えれば、何歳からでも投資の考え方を教えることができます。
例えば、子供が小学生くらいの場合は、昔話の「さるかに合戦」を引き合いに出し、投資の話をしてみると良いかもしれません。
物語の冒頭で、ずる賢いサルが、拾った柿の種とカニの持っているおにぎりを交換し、サルはおにぎりを食べ、カニは柿の種を植え多くの実をつける柿の木を育てることに成功したというくだりがあります。
出費には消費・浪費・投資があり、消費は食費や家賃など日常生活に欠かせない出費で、浪費はムダ使いや必要以上の贅沢などがあたります。投資は、自分のスキルアップのためや、金融商品の購入など、後々リターンが見込まれるものへの出費です。
先程のさるかに合戦で考えてみると、おにぎりを食べたサルは”消費”を行い、柿の木を育てたカニは”投資”を行ったといえます。
そのほかにも人生ゲームやモノポリー、小学校低学年からできるマネー学習アプリや、金融庁とうんこドリルがタッグを組んだ「うんこお金ドリル」など、投資について学びやすいツールがたくさんあるので、子供との遊びの中に取り入れて親子で投資の勉強をするのも良いかもしれませんね。
借りる(家族でお金の話をする習慣)
住宅ローンや奨学金などの目的で金融機関にお金を借りることは、消費と投資のためにお金を借りることであり、返済計画がきちんとしていれば問題はないといえます。
しかし、近年増えているSNSなどで見かける「保証人不要、最短即日借入可能」のサービスや「クレジットカードのリボ払い」「ツケ払い」「後払い」は”借金”としての認識が薄く、スマートフォン一つで手続きが完結するため、安易に手を出しがちです。
例えば、毎月の返済額を一定に固定して支払うリボ払いですが、10万円のバッグを15%の利息で毎月5,000円のリボ払いで購入するとどうなるのでしょうか?
金融庁のHPに金融経済教育高校授業副教材というのがあります。
そのサイトに借金シュミレーターがあり、リボ払手数料の計算が自動でできます。
先程の事例を下記のように入力します。
・条件入力:クレジットカード
・借入金額:10万円
・返済手段・金利:リボ払い 15%
・毎月返済金額:5,000円
すると、
合計返済金額:115,782円
うち利息金額:15,782円
と合計返済金額とその利息をすぐに計算することができます。
今手元にお金がなくても簡単に商品を購入できるからこそ、本当にこれだけの利息を支払ってでも今すぐ買う必要があるのかをじっくり検討する必要があります。
お手伝いやおこづかい帳やマネーゲームなども含め、お金の話を当たり前にできる家庭環境であればトラブルになる前に対処することができるかもしれません。
子供が疑問に思ったことや、買い物で悩んだときに気軽に親と話ができる環境を作るためにも日頃からお金の話をする習慣を作ってみると良いかもしれませんね。
まとめ
成人年齢が20歳から18歳に引き下げられ、18歳から様々な契約が一人でできるようになり、様々なトラブルが起こっています。
そんな中、トラブルに合わない”お金に強い子供”を育てるにはどうしたら良いのでしょうか?
今回は生活の中の「稼ぐ」「使う」「貯める・増やす」「借りる」に焦点をあて、子供と一緒にできるお金に強くなる習慣について考えてみました。
執筆者
宮田 千賀子(MILIZE提携FPサテライト株式会社所属FP)
徳島県出身、茨城県在住で反抗期の娘を2人抱えるアラフォーシングルマザー。
介護、国内生命保険会社、外資系生命保険会社、不動産賃貸管理、ソフトウェア会社を経て、現在はドローンのインストラクターをしながら“空飛ぶFP”として活動中。
得意分野は「保険」「資産運用」など。「今加入している生命保険は本当に必要なのか?」保険業経験者だからこそお伝えできる保険の真実をお伝えします。