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資産運用

初めての資産運用。何から始めるのがおすすめ?

近年、社会の個人投資に対する追い風はますます強まっています。

たとえば、少額投資非課税制度であるNISAが2024年より実質的に恒久化されます。これにより、所定の年間投資枠で得られた利益に対する非課税の対象期間が無期限になります。

さらには、iDeCO制度の改正によって、これまで企業型DCと併用してiDeCoに加入できなかった会社員も条件を満たせば、個人の給与から掛金を拠出し積立投資を行うことができるようになりました。

地道に節約して銀行口座で貯めるという基本的な姿勢はもちろん大切ですが、貯蓄もある程度貯まってくると、さらに貯蓄額を大きくするための資産運用について考える人もいるでしょう。

しかし、突然自分で投資を始めようと思っても何から始めたら良いかわからないですよね。そこで、本記事では、投資の初心者向けに資産運用の心構えとステップをご紹介します。

資産運用を始める前に確認しておきたい3つのこと

まずは、資産運用をスタートさせる前に3つのことについて、事前に確認をしておきましょう。

1. 余剰資金がどの程度あるか把握する

1つ目は、余剰資金の金額です。毎月の収入から出費を差し引いた金額がその月に貯金できる金額に相当しますが、ここではその毎月の貯金額を余剰資金といいます。現時点でその毎月の貯蓄額がどの程度になっているかを確認しておきましょう。

資産運用は基本的に、最低限必要とされる毎月の生活費や各種の請求から資金を無理に捻出して行うべきものではないため、投資を始めても日々の生活に金銭的支障がないか確認します。

もちろん、投資を行うべき余剰資金の水準に対する判断基準はさまざまですが、今の資金が何倍にもなるという謳い文句等で、「無謀な投資」を行うことは非常に危険なので、どの程度までなら投資できるか現実的に考える必要があります。

大きな投資を最初から行いたい人であれば節約を徹底したり、給与の高い職業に転職したりなど、現在の余剰資金や貯蓄額が十分でなくても今後増加させ、その分を投資に充てることも可能です。

一方、今の生活水準をあまり変えずに、預貯金と並行して地道に長期的な投資を続けていきたいという方であれば、毎月の余剰資金から少しずつ投資していくという道もあります。

いずれにせよ、「無謀な投資」をすることがないように、①現在の資産残高はいくらか、②投資を行う際は貯金あるいは毎月の貯金額から資金を捻出するのか、③投資元金が減額しても生活に大きな支障がない程度であるか、といった観点からご自身の投資可能な金額を把握します。

一括で投資したい、毎月積み立てる少額投資を考えている等、個人の状況によって投資ニーズも変わるので、ご自身の興味がある投資対象に必要な金額と時期を考慮して確認すると良いです。

2. 資産運用によって得るリターンの目標額を設定する

2つ目は、具体的な目標額の設定です。余剰資金を把握し投資を行うべきか判断するためにも、何歳までにいくら資産が欲しいという具体的な目標を立てておくと良いです。その目標金額によって資産運用の手段や必要となる資金の金額が変わってきます。

目標金額をある程度決められたら、金融庁が提供している「資産運用シミュレーション」のツール等を利用して、必要な投資金額、期間、利益率などを調べて、どのような投資なら目標金額に達成するかを確認します。

その条件に見合う投資方法を選択していくことで、目標金額を達成するための資産運用に近づけていくことができます。

ただし、投資を始める際に知っておくべきなのは、「リスク」です。投資について少しでも調べたことのある方であれば、「投資リスク」という言葉は聞いたことがあると思います。

投資は簡単にいうと、ある対象に投資を行ってから一定期間を経て得られた利益によって、最初に投資した金額を上回る金額が手に入るということですが、必ず利益が得られるという保障はありません。

投資にはリスクがあるという前提はあるものの、具体的に将来の貯蓄金額の目標を立てておくことで、リスクを考慮した貯金と投資のバランスを考えることが可能となります。

貯蓄と投資のバランスが取れた資産運用を検討しましょう。

3. 資産運用に必要な時間的コストを理解する

3つ目は、資産運用にかける「時間的コスト」です。この記事を読んでいる方は資産運用を始めようと情報収集をされていると思われますが、資産運用の手段は種類が多く、情報収集するだけでも結構時間がかかります。

また手段によっては、専門的な知識が必要ですぐに始めることが難しいという方もいらっしゃると思います。概要は把握できても、やはり資産運用しないと意味がないですよね。

そこで、ご自身ではどのように資産運用をしていきたいか考えてみます。自分で情報収集を行い、経済情勢や業界動向から自分で投資判断をしたいという方は、定期的に投資に必要な時間を捻出し、情報収集や資産残高の増減について詳細に管理すると良いでしょう。

一方で、自分は投資のことはよく分からないので、とりあえずはプロの方に運用を任せて、投資に慣れてきたら自分で資産管理を進めたいという方は、つみたてNISAのような少額投資非課税制度で投資信託等のプロが長期・分散投資を行う商品を購入し、徐々に自分で取引を行う方向にシフトしていくということも可能です。

何をどこまでご自身で管理するのか、しっかり線引きを行い、頼れる部分は外部リソースの利用も念頭において検討します。ご自身の仕事やライフスタイルに最適な資産運用のスタイルを、上述の目標金額が得られそうな投資方法と比較して決めていきましょう。

自分にあった資産運用の見つけ方

資産運用を始める前の3つのポイントを確認できたところで、具体的な資産運用の種類をみていきましょう。

さまざまな資産運用の手法を知る

上述の3つのポイントを軸に、主要な資産運用の方法を一覧にした表を作成しています。ただし、これらが全ての種類を網羅していないことにご留意ください。

種類 ①必要な運用資金 ②利益率、リスク ③時間的コスト
預金 最も一般的な貯蓄方法で、少額からの利用が可能 定期預金や貯蓄預金で利息を得ることができる。リスクは低い 預けるだけでよく、時間的コストは発生しない
債券 個人向け国債であれば額面1万円単位で購入可能 元本保証があり利回りが安定しているが、換金まで一定期間を要する 金利動向に応じて売却を検討する必要があるが、それほど負担ではない
株式投資 1株から投資する単元未満株であれば500〜1,000円から投資可能 インデックスに連動する場合と個別銘柄に投資する場合とで異なる。前者の方がリスクは低い 株価の変化を確認する必要があり、人によっては値動きを逐一確認することもある
投資信託 1万円程度が一般的だが、1,000円から投資できる積立型の投資信託もある ファンドによって異なる。中長期投資を目指す低リスクな運用も多い 投資信託であれば四半期に一回程度の低頻度での確認で良い
保険 毎月の保険料払いで、一定期間後に解約返戻金や年金を受け取ることができる 一般的に他の投資商品よりも利回りが低い。商品によっては為替リスクも高い 保険会社に運用を一任するため、時間的コストはほぼ発生しない
不動産投資 REIT(不動産信託)では5万円程度から、収益物件への投資は100万円程度から投資可能 少額投資からの投資は利益率が伸びにくい一方、収益物件への投資は空室リスクが高い 不動産投資は一度基盤を作るとあまり時間をかけずに運用できる

資産運用の手法によって、初めに必要とされる資金、期待できる利益率およびそれに伴うリスク、そしてその資産運用でかかる時間的コストが変化することがわかります。

初めは少額から開始、徐々に増額・分散させていく

資産運用を早く始めて少しでも資金を大きくしたいと思っている方でも、初心者の方であれば、少しずつ始めていくことをお勧めします。

手段によっては初めから大金の投資を求められることもありますが、上述の単元未満株の投資や個人向け国債など、少額から投資できる手段も最近では増えています。たとえ損をしても生活に大きな支障が出るとは考えにくいので、リスク許容度が低い方は低リスクの投資から始めると良いでしょう。

そして、資産運用を始めてから徐々に慣れてきて投資できる資金の余裕も出てきたら、投資金額の増額、さまざまな対象に投資することによる資産の分散も考えましょう。資産を分散させることは、資産運用における投資リスクを低減させることにもなります。

たとえば、株式投資と債券投資では一般的に反対の価格変動の動きをするため、片方が下がった際には片方の上昇分でカバーするというリスク分散につながります。

場合によって、投資に好機なタイミングがあり大きな利益を狙える時もあります。しかし、初心者の場合は少額から始めて中長期的に投資規模を拡大させていき、より大きな投資効果を狙っていく方が一般的には良いでしょう。

定期的に情報収集を行う

日頃、時間が確保できないという方でも、必要最低限の情報収集はしておきましょう。政治問題、為替や株価の変動、日本経済の動向等、投資手段によらず社会の動きは投資に大きな影響を及ぼすため、日頃からアンテナを高く張っておくことが大切です。

それによって、今後はどのような投資が期待され価値を上昇させそうか、という大きな流れを掴むことができるようになります。初めのうちは難しいかもしれませんが、投資対象の動きと社会経済の動きをあわせてみることで、少なからず、影響を与える要因がわかるようになるでしょう。

社会経済の動向を把握しつつ、現在の投資を継続させるか、資産の配分を変えるか、あるいは投資撤退を行うか、といった判断を行っていきます。投資判断を行うためにも情報収集は欠かせません。

資産運用を開始したら、次に行うべきこと

資産運用を行う理由は人それぞれですが、多くの場合は老後資金や教育資金など、重要なライフイベントに備えたいという方が多いと思います。

資産運用の開始時期によって、比較的短期間でリターンを獲得していくことが必要な場合もあれば、中長期の積立投資で準備できる場合もあるでしょう。

その方の資産運用の方法によって必要なリソース、かける時間、得られる利益は変わってきます。ご自身の将来を見据え、納得のできる投資とご自身の生活にあった運用方法を見つけましょう。

投資環境は経済の動きで刻一刻と変わってきます。ある程度の情報収集は継続的に行い、資産運用における優遇制度は利用しつつ、リスクが高まってきたら状況に応じて投資撤退や資産の組み替えも検討していきましょう。

執筆者

三上 諒子(MILIZE提携FPサテライト株式会社所属FP)
大阪市立大学商学部学士課程修了。
学生時代にESG投資の有効性に関する研究を行う。
主にESG・サステナビリティ領域の業務に従事、現在は企業のサステナビリティ・ガバナンス構築に向け活動中。
地球のサステナビリティには最終的に消費者の力が必要と考え、消費者行動に影響を与えるファイナンシャルプランナーを目指す。