2人で過ごしていた結婚生活と子供が生まれた後の生活では、生活スタイルが変化し、お金の優先順位も変化するのではないでしょうか。
例えば、食費にもあまり気を遣わずお金を使っていたが、食費を抑えて子供の養育費用に少し回すなど、お金の使う対象が変わるといったケースが考えられます。
出産費用、生活用品費、保育費、衣服費など、多くの出費が見込まれる子供の出産は家計の在り方を見直す良いきっかけになるかもしれません。
これまでの出費を見直し、子供の教育費や新たな保険への加入、車や住宅の購入など、中長期の出費を見越した基盤形成を見据え、しっかり管理していきましょう。
現時点で家計はどのように管理されているでしょうか。一緒に課題を抽出し、あなたの家族にピッタリな家計プランを作っていきましょう。
このページの目次
まずは基本から〜収入と出費を見直す〜
今月あまり使った覚えがないのに貯金に回すお金がいつの間にか無くなっている・・・。そんな方は毎月の収支を正確に把握できていないケースが多いです。
現時点で生活資金がギリギリの方、理想とする貯金額に到達していない方は、子供の成長に合わせて、さらに余裕がなくなることが予想されます。
現時点で出費を抑えると、どの程度毎月の貯金額を増額させることができるか試算してみましょう。
【事例①】少しの努力で毎月5万円以上の出費を抑える
家計の出費を分析する際には、まず情報が必要です。レシートを保管したり、アプリを利用して、毎月の出費の詳細がわかる状態にしておきましょう。
図表1では、子供の出産を控えた20代の新婚夫妻が毎月の出費を見直した結果、約7万円の費用を抑えることができた事例を紹介しています。
削減できた出費は子供の養育費に回したり、住宅購入を見据えて貯金したりなど、将来の選択肢を広げるために有効活用することができます。
今回の事例では、通信費、食費、交際費、美容といった取り組みやすい費用を少し意識するだけで、全体を通してみると大きな違いが生まれることがわかります。
夫婦間で削減できる項目と、どうしても出費が必要な項目を相談しながら決めて、毎月少しずつ改善していくことを検討しましょう。
【図表1】
項目 | 改善前 (A) | 改善ポイント例 | 改善後 (B) |
食料 | 3万円 | ・外食を月に4回に減らす
・昼食は弁当を持参する ・まとめ買いで単価を下げる |
2万円(△1万円) |
住居 | 9.6万円 | ー | 9.6万円 |
光熱・水道 | 1万円 | ー | 1万円 |
家具・家事用品 | 2万円 | ー | 2万円 |
被服及び履物 | 2.5万円 | ・古着や中古品を購入する
・おさがりをもらう ・必要最低限の量に抑える |
1万円(△1.5万円) |
保険医療 | 0.5万円 | ー | 0.5万円 |
交通・通信 | 1.7万円 | ・格安プランに乗り換える
・不要な外出は避ける |
1万円(△0.7万円) |
教育 | 1万円 | ー | 1万円 |
教養娯楽 | 3万円 | ・旅行に行く回数を減らす | 0.5万円(△2.5万円) |
その他の消費支出 | 5万円 | ・付き合いの回数を限定する
・デパートコスメをやめる |
2万円(△3万円) |
合計 | 27.3万円 | 合計 | 20.6万円 |
差額 (A)ー(B) | 6.7万円 |
(出典:筆者作成)
不要な出費は避けよう〜保険の見直し〜
毎月の生活費の改善に取組むことができれば、次に加入している保険の見直しを行います。加入していない方は、新しく家族が増えることを見越して加入を検討しても良いでしょう。
例えば、新入社員になったタイミングで加入した保険がそのままになっているとします。子供の出産で必要な保障内容が変わる可能性もあるので見直しが必要です。
他にも、友人の勧めで生命保険に加入したがいまいち必要性を感じない、車の保険料をもう少し抑えたいなど、保険に関する悩みを抱えている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
毎月の保険料も年間を通じてみると大きな出費です。保険内容は重複していることもあるため、公的な保険制度の内容とも比較しながら定期的な見直しで本当に必要な保険にだけ加入しましょう。
【事例②】生命保険と損害保険を3つのポイントで見直す
図表2では、保険見直しの3つの見直しポイントを示しています。ご自身の加入状況に照らし合わせて、保険の要否を改めて考えてみてください。
特に未就学児の子供がいるファミリーは、子供の教育費を準備する学資保険、子供のけがに備える傷害保険、収入が減った時に家計を維持するための収入保障保険などをより重点的に検討すると良いです。
【図表2】
主な保険の種類 | ①保険金額 | ②保障期間 | ③保険料 | |
生命保険 | ・死亡保険(定期保険/終身保険)
・生存保険(個人年金保険/学資保険) ・養老保険(死亡保険&生存保険) ・医療保険 |
・実際想定される費用を賄うことができる保険金額であるか
・他の資産(預貯金等含む)を差し引いた差額部分の充当であり、余分な資金とならないか ・公的保険制度で受給できる保険金を加味して、保険加入の要否を判断できているか など |
・高額な出費のあるタイミングに、保険金が受け取れるか
・万一時の備えとして適切な期間設定となっているか ・定期と終身を上手く組み合わせることができているか ・途中解約した際の解約返戻金の取扱いはどうなっているか など
|
・出費の何割を占めているか
・月々の負担が過度になっていないか ・保険料の他社比較を十分に行ったか ・加入のタイミングが適切であったか ・保障内容に重複のある制度に加入して無駄な支払いが発生していないか など
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(出典:筆者作成)
資金に余裕が出てきたら〜資産運用を始めよう〜
家計の見直し、不要な出費の削減で貯蓄できる金額がある程度確保できれば、余裕のある範囲で資産運用を始めることができます。
投資スタイルによって手数料も変わってきますので、資産運用に費やすことの出来る時間とリソースの観点から無理なく続けられる方法を選びます。必要に応じて保険商品や投資信託などを活用します。
特に子供がいる場合は、中長期視点での運用が重要です。住宅購入、教育費、その他ライフイベントでのまとまった出費が予想され、必要となってからの準備では間に合いません。
ただし、投資にはリスクがつきものであることにご留意を。貯蓄と投資のバランスを見極め、安全性の高い資産とリスクのある資産に分散をさせながら運用していきましょう。
【事例③】毎月5万円の積立金を年率3%で10年間運用する
図表3では、出費の削減と保険の見直しで捻出された5万円を毎月の投資資金として積立て、想定年率3%で10年間運用した場合、最終的には元本600万円、運用収益が98.7万円となる事例を示しています。
普通に貯金していた場合と比較すると、資産総額は約100万円の差が発生します。ただし、前提条件やシミュレーションの背景にあるロジックの違いによって、実際の運用成果に差が出ます。
【図表3】
(出典:金融庁ホームページ「資産運用シミュレーション」を利用して算出)
さいごに
未就学児ファミリーでファイナンシャルプランニングを行い基盤を整えたいという方向けに、出費を抑え、保険の見直しで不要な出費を削減し、資産運用で資産形成を行う事例をご紹介しました。
ご自身の家計における課題や改善点は明らかになったでしょうか。一度の見直しで満足せず、FPに頼るなど、今後もお金と向き合う時間を意識的に作っていくことが大切です。
また、上記の事例以外にも、衣服の仕入れ方、お出かけ先、習い事など、子育てにおいての節約ポイントがたくさんあります。日々、創意工夫で出費を抑える習慣を作ると良いかもしれません。
毎月のお金の流れを正確に把握し、定期的に見直しを行いながら、将来を見据えた貯蓄、投資を計画的に進めていくと良いでしょう。
執筆者
三上 諒子(MILIZE提携FPサテライト株式会社所属FP)
大阪市立大学商学部学士課程修了。
学生時代にESG投資の有効性に関する研究を行う。
主にESG・サステナビリティ領域の業務に従事、現在は企業のサステナビリティ・ガバナンス構築に向け活動中。
地球のサステナビリティには最終的に消費者の力が必要と考え、消費者行動に影響を与えるファイナンシャルプランナーを目指す。