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年金のギモン、繰上げと繰下げはどちらを選ぶべき?
仕組みや注意点についてわかりやすく解説

人生100年時代が本格的に到来する中、年金の「繰上げ」と「繰下げ」、どちらを選ぶべきか悩んでいる方も少なくはないでしょう。

この記事では、繰上げ・繰下げ制度の仕組み、それぞれのメリット・デメリット、選択する際の注意点やポイントなどを解説します。

この記事を参考に、自分に最適な年金受給の選択を行いましょう。

年金の繰上げ・繰下げ受給制度について

はじめに年金の繰上げ・繰下げ制度について解説します。それぞれのメリット・デメリットをしっかり確認しましょう。

1.年金の繰上げ制度

年金の繰上げ制度とは、通常の年金受給開始年齢よりも早く年金を受け取る制度です。

国民年金あるいは厚生年金といった公的年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、繰上げ受給を選択することで60歳から年金を受け取ることができます。ただし、繰上げ受給を選択することで、受給額が減額されます。この減額率は、繰上げ受給を開始する年齢によって異なります。例えば60歳(0ヶ月)の場合は減額率24.0%(昭和37年4月2日以降生まれの方)です。

<メリット>
・早期に年金受給が開始されることで、定年退職後の生活資金を早い段階で確保できる

<デメリット>
・受給額が減額されることにより、長期的な収入が減る

2.年金の繰下げ制度

年金の繰下げ制度とは、通常の年金受給開始年齢よりも遅く年金を受け取る制度です。

通常の受給開始年齢を過ぎても働き続けることができる場合や、年金受給を遅らせることで受給額を増やしたい場合に選択されることが多いです。

繰下げ受給を選択することで、受給額が増額されます。この増額率は、繰下げ受給を開始する年齢によって異なります。例えば、75歳(0ヶ月)の場合、増額率は84.0%です。

<メリット>
・受給額が増額されることで、長期的な収入が増える
・現役時代の働き続ける意欲や社会参加の機会が維持される

<デメリット>
・年金受給開始が遅くなることで、その期間の生活資金の確保が必要になる


受給開始年齢別の受給率早見表(※)


(※1)日本年金機構「繰上げ請求早見表」「繰下げ増額率早見表」をもとに筆者作成
(※2)本表では0ヶ月のみ記載していますが、60歳0ヶ月〜75歳0ヶ月まで繰上げ・繰下げともに1ヶ月単位で受給率は変わります。
(※3)昭和37年4月2日以降生まれの方の場合

制度を利用する際の3つの注意点

次に年金の繰上げ・繰下げ制度を利用する際の注意点について解説します。

1.繰上げ制度では申請手続きが必要

繰上げ制度を利用するためには、年金事務所または街角の年金相談センター等で手続きを行わなくてはいけません。「老齢厚生年金・老齢基礎年金支給繰上げ請求書」などの書類提出が必要ですが、必要書類に不備がある場合、申請が認められないこともあるため、手続きには十分注意しましょう。なお、繰下げ制度を利用する場合には、65歳到達時に年金請求の手続きをしなければ、繰下げて受け取ることができます。

2.税金や社会保険料への影響

繰上げ・繰下げ制度を利用することで、税金や社会保険料に影響が出る場合があります。例えば、繰上げ受給を選択した場合、毎年の受給額が減ることで、65歳で受給開始するよりも年間の所得税が低くなる可能性があります。逆に、繰下げ受給を選択した場合、受給額が増えるため、毎年の所得税が高くなることも考えられます。また、社会保険料についても、繰上げ・繰下げ制度によって変動する場合があるため、注意が必要です。

3.在職中で支給停止となる部分は繰下げても対象外のまま

65歳以降もしっかり働いて収入があり、支給停止となる年金額がある場合、繰下げ対象となるのは、支給停止とならない部分だけです。繰下げの場合でも、支給される部分と支給停止となる部分自体は変わらないということです。

どちらを選ぶべき?
考えるべき3つのポイント

では年金の繰上げ・繰下げ制度を選択する際には、どのようなポイントに気を付ければ良いでしょうか?大きく3つのポイントが挙げられます。

1. 個人のライフプランや収入状況を考慮

繰上げ受給を選択すれば、早期に年金受給が開始されますが、受給額が減額されることになります。一方、繰下げ受給は受給額が増額されますが、受給開始が遅くなります。自分のライフプランや将来の収入状況、貯蓄状況を考慮して、どちらが適切かじっくり判断しましょう。

2.健康状態や家族構成の影響

健康状態や家族構成も選択に影響を与えます。例えば、健康状態が良好で長寿が予想される場合や、扶養家族が多い場合は、繰下げ受給で受給額を増やすことが考えられます。逆に、健康状態に不安を感じている場合や、早期に収入を確保したい場合は、繰上げ受給を考える必要があります。

3.選択のタイミング

年金制度や経済状況は常に変化しています。選択のタイミングによって、繰上げ・繰下げ制度のメリット・デメリットが変わることがあります。そのため、選択を行う際には、その時点での制度や経済状況を踏まえて慎重に判断しましょう。

まとめ

本記事では、年金の繰上げ受給と繰下げ受給について、その仕組みやメリット・デメリットを解説しました。

年金受給はライフプランに大きな影響を与えます。選択に迷った場合は、ファイナンシャル・プランナー(FP)や税理士などのお金の専門家に相談することも一つの方法です。

今回の記事を参考に、自分にとって最適な年金受給の選択を行いましょう。

執筆者

菊地 学(MILIZE提携マネーエスコート代表)

宮城県出身。慶應義塾大学商学部卒。ファイナンシャル・プランニング技能士1級。

新卒で大和証券へ入社後、みずほ銀行など5社へ転職し、FPコンサルティング部部長や社長室室長などを経て独立。現在はメディア制作事務所マネーエスコート代表。

金融機関の執筆記事の監修や、不動産会社でのセミナー講師、金融機関向けの動画制作など実績多数。

20代〜40代の方向けの情報サイト「マナブロ」も運営中。家計、生活、家電、アプリなど6ジャンルを掲載。金融初心者からは「難しいテーマでもわかりやすく理解できる」と好評。